| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-134

奥能登のゲンゴロウ類の季節消長とハビタット利用の実態

*野村進也(愛媛大院・農),赤石大輔(NPOおらっちゃ),小路晋作(金沢大・地連セ),日鷹一雅(愛媛大・農)

止水性水生昆虫には里山環境に棲み繁殖に水田を含む多様なハビタットを利用する種が含まれるが詳細は不明である。奥能登地域は良好な溜め池が多くシャープゲンゴロウモドキDytiscus sharpi、ゲンゴロウCybister japonicus、マルコガタノゲンゴロウCybister lewisianus、クロゲンゴロウCybister brevis、マルガタゲンゴロウGraphoderus adamsiiなど希少ゲンゴロウ5種が生息し、その繁殖活動及びハビタット利用を調査する為溜池と水管理の異なる水田においてコドラート及び夜間調査を行った。慣行水田では7月前半より強い中干しにより水田の積極利用は見られなかった。一方で同じく観察下の直播水田では中干しをせず水量は安定し、まとまった量のゲンゴロウ及びクロゲンゴロウ幼虫が見られ同時期の溜め池で2種の幼虫が多数得られたことからゲンゴロウ及びクロゲンゴロウの水田利用には安定した水量が必要であることが示唆される。一方でマルコガタノゲンゴロウは幼・成虫共に水田利用の形跡は見られず、春繁殖のシャープゲンゴロウモドキでは池沼でのみ幼虫が得られた。

2008年より2009年まで標識再捕獲によるゲンゴロウの追跡調査の結果、マルコガタノゲンゴロウを除く4種では池間の移動が見られたが、調査した溜め池の全てに見られたクロゲンゴロウに比べゲンゴロウは小規模で浅い水域には見られずシャープゲンゴロウモドキでは冷涼で泥深い水域への依存が見られたこと、更にシャープゲンゴロウモドキでは秋季以降はそれまで殆ど見られなかった開放的な溜め池でも増加したことから、寒冷期間に向けて活動が活発化し移動分散をする傾向が見られた。マルコガタノゲンゴロウでは移動個体が得られず、溜め池への依存性が強く認められた。


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