| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-143

ファイトレメディエーションに利用可能なコケ植物の探索

*鈴木悠介(名大・農),竹中千里(名大院・生命農),坪田博美(広大院・理)

銅(Cu)、カドミウム(Cd)などの重金属は利用価値が高い一方で生体内への蓄積により毒性をもつことが知られ、鉱山跡地をはじめとする重金属汚染地の浄化対策が求められている。重金属汚染問題への有効な対策として、植物を用いた環境浄化技術であるファイトレメディエーションがある。この技術開発は汚染土壌への適用が主流となっている。一方、鉱山跡地からは水に溶脱した重金属が低濃度ながらも流出し続けていることから、水圏に適用しうるファイトレメディエーション技術開発も必要である。山地に位置する鉱山跡地からの流水中に生育可能であり、環境適応能力が高い植物としてコケ植物がある。土壌に生育するコケではCuを高濃度で蓄積できるホンモンジゴケが報告されている。そこで、本研究では重金属汚染水に対するファイトレメディエーションに有用なコケ植物の探索を目的とする。

調査は鉱山跡地3地点を含む計6地点で行い、各地点から水試料及びコケ植物を採取した。水試料は水温、EC 、pHを現地で測定し、重金属濃度については濾過後、ICP-AESで元素分析を行った。コケについては、試料を洗浄・乾燥(80度、48時間以上)後、硝酸分解を行い、ICP-AESで元素分析を行った。分析に供したおよそ20種のコケ(未同定種も含む)の内、重金属高濃度集積植物の基準値を上回る濃度で重金属を含有していたコケが、Cu、鉛(Pb)についてそれぞれ数種認められた。Cd、亜鉛(Zn)についても、0.07 mg/g DW(Cd)、4.5 mg/g DW(Zn)と、他の植物と比較して高濃度で蓄積しているコケが認められた。特にCuやPbについては、低濃度の水から植物体中に高濃度で蓄積できるコケを見出した。


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