| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-144

火入れ地における希少植物の生育環境

*増井太樹(鳥取大・院・農), 佐野淳之(鳥取大・農・FSC )

火入れという人為的攪乱のもとで成立する草原は多くの動植物に生存の場を与える。しかし農業形態や生活様式の変化により草原の必要性が低下し、その面積は急速に減少して多くの草原性植物が絶滅の危機にさらされている。岡山県蒜山地域では現在でも火入れが行なわれて草原が維持されている。この草原に生育する植物の中には国や岡山県の絶滅危惧種に指定されているものもあり、これらの希少種の生育特性を明らかにすることが重要である。キキョウは環境省RDBに絶滅危惧II類として記載され絶滅の危険が増大している種である。本調査地にはキキョウが多く存在し、この種の重要な生育地であると考えられるが、その生育特性は明らかになっていない。そこで本研究ではキキョウの生育環境を明らかにするために、キキョウの分布と生育環境を調査した。

約22 haの草原を対象に全域踏査を行い、GPSを用いてキキョウの位置を特定した。2008年8月に12,606開花個体を確認した。GISを用いキキョウの生育に影響を与えている要因を解析した。また、1 m×1 mのコドラートを71個設置し、開空率、斜度、土壌硬度、リターの厚さ、土壌水分、露岩率、火入れ後の燃え残りリターの面積率を測定した。これらを用いてキキョウの生育適地の環境を決定木分類によって解析した結果、第1分岐において露岩率4%が閾値となり、露岩率4%以上の場所に多くのキキョウが生育すると推定された。露岩率が4%以下の場所であっても第2分岐において開空率22.3%以上の場所ではキキョウが生育すると推定された。すなわち、キキョウの生育には火入れによって明るい場所ができるだけではなく、岩が存在することによって他の植物が生育できないパッチができ、立地のモザイク構造が形成されることも重要な働きをしていると示唆された。


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