| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-149

サシバの育雛期間における給餌エネルギー量の推定

*糸川拓真(岩大院・農),東淳樹,出口善隆(岩大・農),河端有里子(岩大院・農)

サシバは,春から夏にかけて日本などに渡り,繁殖を行なう中型猛禽類である.しかし近年生息数が激減しており,2006年には絶滅危惧2類に指定され,本種の保全対策が急務となっている.本研究では,本種の育雛期の給餌に供せられる食物動物に着目し,本種の育雛に重要な食物動物を明確にすることを目的とした.

はじめに,本種の繁殖調査を実施している岩手県花巻市周辺において,食物動物の試料採取を行なった.試料は,体長と湿重量を計測後,風乾し乾燥重量を計測した.エネルギーはカロリーメーターを用いて計測を行ない,各食物動物の単位体重当たりのエネルギー量,さらに体長とエネルギー量の回帰式を算出した.次に,本種の巣の上部に仕掛けたCCDカメラの映像データに,上記の結果を当てはめ,本種の育雛に要したエネルギー量を推定した.さらに,推定結果を時期・時間帯別に分別し,給餌エネルギー量および種別の割合の変動も解析した.なお、映像データ(給餌動物種,体長の推定値,給餌回数)は,河端(2009)の解析結果を使用した.

食物動物種別では,トウキョウダルマガエル,ヘビ類,小型哺乳類など大型の食物動物が高い割合を示し,この3種で全体の約70%を賄った.一方,時期・時間帯別で見ると,6月下旬および早朝4時〜7時にかけてアオガエル科の給餌エネルギー量が高いことが分かった.

育雛期間と給餌回数には限りがあると考えられるため,給餌回数を抑えつつ必要栄養量を満たすためには,大型の食物動物の給餌が重要であることが示唆された.しかし,時期や,時間帯など上記の食物動物の捕獲が困難である際には,アオガエル科など小型でも比較的捕獲が容易な動物を給餌することで,エネルギー量の補填を行なっている事が考えられた.

なお本研究は文部科学省科学研究費補助金(課題番号19510231)の一部として行なった.


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