| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-159

エンレイソウ属を利用したエゾシカ採食圧の指標化

*稲富佳洋(北海道環境研),宇野裕之(北海道環境研),高嶋八千代,鬼丸和幸(美幌博物館),車田利夫(北海道環境研)

エゾシカ保護管理計画では、エゾシカによる採食圧が植生に与える影響を指標化し、エゾシカ個体数管理の指標として利用することを検討している。一方、北米では、エンレイソウ属の平均草高や繁殖個体の割合を指標として、森林生態系に及ぼすオジロジカの影響を評価した研究例がある(Anderson 1994, Augustine & Frelich 1998)。本研究では、エンレイソウ属を利用して、エゾシカの採食圧による影響を指標化できるか検討するために、エゾシカの利用頻度とエンレイソウ属の草高との関係を明らかにすることを試みた。まず、エゾシカを排除した「囲い区」(7か所)と非囲い区である「阿寒」(7か所、囲い区に隣接)及び「厚岸」(10か所)にそれぞれ2m×2mの方形区を設け、各方形区に生育するエンレイソウ属の生育段階、草高及び採食の有無等を記録した。次に、各調査区における相対的なエゾシカ利用頻度の指標を得るために、自動撮影装置(YoyshotG2)を設置して、稼働時間当たりのエゾシカ撮影枚数を算出した。さらに、各調査区における相対的な光環境を把握するため、全天写真を撮影して林冠開空率を算出した。

一般化線形モデルによって、エンレイソウ属各個体の草高と林冠開空率及びエゾシカの撮影頻度との関係を解析したところ、光環境がエンレイソウ属の草高に与える影響は不明確であった一方で、エゾシカの利用頻度が大きい生育地ほど、エンレイソウ属の草高は低くなることが示唆された。また、調査期間中に採食された個体の草高と採食されなかった個体の草高を比較したところ、草高が高い個体ほど、採食されるリスクが高くなることが示された。このことから、利用頻度が高い生育地ほど草高が低くなる原因として、エゾシカが大きな個体から選択的に採食していることが示唆された。


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