| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-175

牧場からの距離がニホンジカによる樹木の樹皮剥ぎ発生に与える影響

*飯島勇人, 小林慶子, 長池卓男(山梨県森林研)

近年、ニホンジカによる植生への摂食圧が高まり、その適切な管理手法の開発が求められている。ニホンジカは広域を移動し、嗜好性の高い食物の存在、アクセスのしやすさ(傾斜、標高など)などから摂食を行う場所を決定していると考えられる。そのため、ニホンジカによる摂食を効率的に抑制するためには、ニホンジカが摂食しやすい条件を明らかにする必要がある。牧場には大量の牧草が存在するため、柵等でニホンジカの侵入が防がれていなければ、ニホンジカを誘引する環境条件であると考えられる。そこで本研究では、牧場との距離が、周囲の森林における樹皮剥ぎ発生に与える影響を検討した。2009年8〜9月に山梨県清里の県有林において10×40mの調査区を、牧場から500m以内に9箇所、500m以上遠くの箇所に9箇所設置し、調査区内の地上高1.3mの直径が3cm以上の全立木の樹種、直径、剥皮の有無を調査した。また、2009年11月に、牧場に近い4調査区および遠い5調査区において、1×1mの小区画を10個設置し、小区画内のニホンジカの糞粒数を数えた。調査区は1調査区を除いてミズナラが優占する落葉広葉樹林であった。調査区内には45樹種が出現したが、全調査地合計で50個体以上データが得られたアオダモ、ミズナラ、ミツバツツジ、リョウブの4樹種についてのみ結果を示す。ミズナラ、リョウブは牧場に近い調査区が遠い調査区よりも剥皮率が高かった。一方、きわめて嗜好性の高いアオダモは牧場からの距離によらず高い剥皮率であり、逆にミツバツツジは牧場からの距離によらず低い剥皮率であった。糞密度は牧場に近い調査地の方が遠い調査地よりも高かった。当日は傾斜および標高の影響も加味した解析結果を示す。


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