| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-202

里山の保全対策―大型肉食獣の匂いによる、獣害(主にニホンザルによる害)の軽減―

*渡辺麻気(広島大・総科),山崎亙(広島大・院・国際協力),大丸英士(広島市安佐動物公園),中越信和(広島大・院・国際協力)

近年、全国各地で山村集落での獣害が顕在化している。その原因としては、1960年代以降の急激な工業化とエネルギー転換により、人間の生活スタイルが急激に変化したことが挙げられる。農村にいた人が都市に移り森林の維持管理が難しくなり、動物が人間の生活圏に入り込みやすくなったために農作物被害が深刻化したと考えられる。また、集落の少子高齢化が原因となり農作物被害の対策が困難となっていることも被害を助長している大きな要因と考えられる。

本研究では、獣害対策の中でも取組みやすい、大型肉食獣であるライオンやトラの体臭を利用する対策方法が、ニホンザルに対して効果が期待できるかどうかを検証した。研究対象地は、広島県安芸太田町加計にある温井団地で行った。大型肉食獣の体臭付き布を獣害から保護する畑の周囲に設置し、ニホンザルがその区画に侵入しないかどうかを調査した。結果は、設置後3か月ほどニホンザルの侵入が認められなかった。

次に、この地域を含む加計町周辺部の集落において獣害に関する意識をアンケート調査により明らかにした。その結果この地域では、かなり深刻な獣害(特にニホンザル)に遭っており、住民は諦めの気持ちが強いことが明らかとなった。

これらの実験や調査から、この地域でのニホンザルによる農作物被害は、かなり深刻であることが明らかになった。また、大型肉食獣の匂いによるニホンザルの防除効果による可能性を導くことができると思われた。

なお、ニホンザルにとって大型肉食獣のにおいが忌避行動を引き起こすかを検証するため、岡山市池田動物園のご協力で当園の飼育ニホンザル個体に対して、給餌実験を行ったが、特に忌避行動は認められなかった。この結果から、今後は飼育獣ではなく野生の個体に対しての実証実験が必要と思われた。


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