| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-223

河川の植物相の帰化率は何によって決まるか?

橋本佳延,兵庫県立人と自然の博物館

本研究では、河川における外来植物の侵入・定着状況と各環境要因との関係を解析し、その定着に強く影響を及ぼしている要因を明らかにすることを目的とした。

解析には河川水辺の国勢調査(平成5年度〜平成12年度)報告書の植物相調査および群落調査の結果を用いた。(同種であっても種名(和名)の表記が調査年度や河川によって異なるものについては、標準和名に統一して扱った。)

河川における外来植物の侵入状況の指標として、各河川における植物相の帰化率および陸域における外来植物群落占有率を算出し、各種環境要因との関係について回帰分析を行って線型モデル、累乗モデル、指数モデル、片対数モデルでの適合性を検討した。なお環境要因は、気候要因として年平均気温(℃)の1変数を、人為撹乱要因として流域人口密度(人/km2)と河川敷に占める人口改変地の割合の2変数を、立地要因として河川延長(km)、河川敷の面積(km2)、流域面積(km2)、調査面積(km2)の4変数の7変数を用いた。

解析の結果、植物相の帰化率については流域人口密度との片対数モデル(帰化率=0.079+0.023×log(流域人口密度)、r2=0.4411、p<0.001)が最も当てはまりがよかった。これは、流域人口密度の上昇に伴い流域内における人間活動(物資等の移動、人工緑地の形成など)が活発になり外来植物の侵入機会が上昇することが帰化率に最も影響を与えていることを示していると考えられた。また、外来植物群落占有率については年平均気温との指数モデル(log(外来植物群落占有率)=-0.572+0.178×log(年平均気温)、r2=0.2088、p<0.001)が最も当てはまりがよかった。これは、気候の温暖な地域で外来植物の生育が旺盛となって大面積の群落が形成しやすくなる傾向を示していると考えられた。


日本生態学会