| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-226

ハイパースペクトルリモートセンシングを用いた侵略的外来種セイタカアワダチソウの分布推定

石井潤,鷲谷いづみ(東京大・農)

関東平野の北部に位置する渡良瀬遊水地は、本州以南で最大の面積(約3,300ha)を持つ湿地帯である。ヨシとオギの高茎草本群落の中に、全国的に絶滅が危惧される植物が59種生育し、全国的にみて生物多様性保全上重要なウェットランドの1つである。しかし、近年セイタカアワダチソウが広範囲に分布していることが確認され、その対策の検討のために、詳細な分布の把握が課題となっている。そこで、本研究では、航空機搭載型ハイパースペクトルリモートセンシングを用いて、セイタカアワダチソウ分布図の作成手法を開発した。

現地調査で92方形区(5×5 m)のセイタカアワダチソウの被度(%)データを取得し、ハイパースペクトルデータとの関係を一般化線形モデルを用いて検討した。92方形区のうち半分はモデル作成用データとし、残りの半分は検証用データとした。目的変数をセイタカアワダチソウの在・不在(被度10%以上を在、10%未満を不在とする)、説明変数をハイパースペクトルデータ7バンド(青〜近赤外色の範囲)の反射値、NDVI(正規化植生指数)の一次項と二次項、経度(座標)の一次項と二次項の11変数として、AICに基づくモデル選択を行った。NDVIと経度は、それぞれピクセル内の土壌スペクトルの影響と、画像内の東西方向のスペクトルの変化傾向を考慮するためである。

解析の結果、最小AIC値のモデルにおいて、3つのバンド(515, 612, 719 nm:それぞれ緑、赤、近赤色付近の波長帯)と経度の一次項が変数として選択された。ROC曲線下の面積であるAUCを用いて推定精度を評価した結果、モデル作成用データでは0.89、学習用データで0.83と利用可能なモデルであることが示された。


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