| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-236

国立環境研究所侵入生物データベースの機能強化とその応用への展望

*岡本 卓, 五箇公一(国立環境研)

侵入生物による生態影響は,生物多様性劣化の重要な原因の一つであり,これに対するリスク予測と防除は喫緊の課題である.侵入経路や生態影響は,運ばれる生物の特性と,移入元・移入先双方の生態学的・社会的環境との相互作用によって多岐にわたる.一方で,世界中で影響を与えている種や,異なる分類群ながら相互に関連した生態や侵入経路を持つ種も知られ,地域や分類群を越えた関連性・共通性もある.従って,侵入生物に対する戦略的な対策のためには,あらゆる侵入生物についての既知情報を体系的に提供・分析し,知見を国際的に共有することが必要であり,そのための情報基盤の整備が求められる.

国立環境研究所では,日本国内に侵入した生物,または侵入の可能性のある生物についての情報を提供するため,侵入生物データベース (http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive) を公開しており,これは侵入生物に関するデータベースとしては国内最大規模の情報量を持つ.この情報をより有効活用するため,我々は現在本データベースの改良を進めている.現時点での主な改良点は,(1) 計算機によるデータの扱いと,策定が進められている国際標準 (http://www.gisin.org) への対応を考慮した,登録データの変換; (2) (1) に基づく,移入分布・生息環境・侵入経路・影響の種類等による柔軟な検索機能の付与; (3) 英語版の作成,である.これにより,国内外への体系的な情報発信が可能になるとともに,例えば国内での島嶼域へ移入や,様々な非意図的な移入の影響といった,現行の外来生物法で対応できない問題の重要性を定量的に示すことも容易になる.今後,情報の追加により網羅的なデータベースに近づけるとともに,柔軟なデータ分析を考慮した出力機能の付与,GISIN国際分散データベースへの参加などを行う予定である.


日本生態学会