| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-254

複数外来捕食者存在下におけるmesopredator releaseの可能性の検討:桶ヶ谷沼の事例

*三宅もえ,宮下 直(東大院・農)

複数の外来種が同時に生息する場合、駆除により最上位捕食者のみが減少すると、中間捕食者の増加により在来種への影響が増大する可能性が指摘されている(mesopredator release)。したがって外来種の駆除を検討する際には、外来種間の相互作用を含む食物網構造の把握が必要である。

アメリカザリガニは捕食や水草の切断により在来生物群集に大きな影響を与える侵略的外来種であるが、日本においては、ウシガエルや大型魚類などの外来種が主な捕食者であることが多い。そのため複数の外来種が相互作用する典型例であり、外来捕食者の駆除をきっかけにザリガニの個体数が急増する可能性がある。しかし外来捕食者はザリガニと在来種を捕食する雑食者であり、またサイズによって食性が変化するため、駆除の判断が難しい。

本研究では、駆除に伴いmesopredator releaseが生じる可能性のある外来捕食者を特定するために、1)安定同位体比を用いて外来捕食者の食性をサイズ別に明らかにし、2) 安定同位体比からザリガニに最も強く依存していると考えられた捕食者について、ザリガニや在来種に対する捕食効率を調べる実験をおこなった。

同位体の結果、中型カムルチーはザリガニに強く依存していた。捕食実験の結果、中型カムルチーはザリガニに対する捕食効率が高かったが、小型カムルチーでは小型ザリガニしか捕食できなかった。サイズによってザリガニへの依存度は異なるが、カムルチーの駆除はザリガニを急増させる可能性があることから、現時点では実施しない方がよいと考えられる。一方ウシガエルとアカミミガメは、同位体の結果、陸域と水域の餌を利用しており、ザリガニへの明確な依存がなかったため、駆除する方がよいと考えられる。実際の管理の現場では、個体群動態を考慮するために今後もモニタリングを継続する必要があるだろう。


日本生態学会