| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-297

富士山における植物の生育への栄養塩制限と標高の関係

*後藤友紀,本間彩織,山村靖夫(茨城大・理),中野隆志(山梨県・環境科学研)

火山地のような土壌が未発達な立地においては、植物の生育を制限する要因として栄養塩が重要であり、制限要因となる主な元素はNとPである。一般に、温帯以北では植物の生育はNに制限される。しかし、熱帯雨林においてはPが制限要因となることが知られているおり、ハワイ島では、標高の上昇に伴い、N制限からP制限に変化する例が報告されている。また、富士山亜高山帯のベニバナイチヤクソウでも同様の関係が示唆された。

そこで、富士山の標高1400 m から2400 m(森林限界)までの主要な樹木種において、標高の上昇に伴いN制限からP制限へ変化することを予想し、これを検証することを目的として研究を行った。標高の異なる3地点において、カラマツ、シラビソ、コメツガ、ナナカマド、ミネヤナギ、ダケカンバの6種について生葉と落葉のNおよびP含量を測定し、N・P制限の指標として落葉時の回収率と生葉のN:P比を計算した。同時に各地点の土壌環境を調査した。

結果は、すべての樹種においてP制限の傾向を示し、標高との関係は樹種によって異なっていた。土壌中の利用可能なNとPの濃度はともに、標高の上昇とともに減少する傾向があった。調査地でのP制限は、温度の低い高標高地域のため風化速度が遅いことによると考えられた。


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