| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-304

Acacia mangium植林地土壌における亜酸化窒素フラックス空間構造の季節変動要因

*根田遼太(京大・農), 太田誠一(京大・農), 石塚成宏(森林総研), Joko Heriyanto (PT. MHP), Agus Wicaksono (PT. MHP)

近年、東南アジア地域において拡大するマメ科早生樹による産業造林地において、その土壌が温室効果ガスの1つである亜酸化窒素(N2O)の重大な発生源である可能性が指摘されている。本発表では、N2Oフラックスの時空間変動に着目し、インドネシアA. mangium植林地土壌でのその発生実態と変動要因について検討した。

調査は、インドネシア南スマトラ州のA. mangium植林地にて行った。2005年8月(少雨期)および2006年3月(多雨期)に、10×10mに分割された60×100mプロットの各格子点(77点)上でN2Oフラックスを測定し、同時にリターおよび土壌を採取した。また、2005年8月にはアンモニア態、硝酸態窒素を、2009年10月および12月にはリター抽出液を用いた現地基質添加実験を行った。

N2Oフラックスの平均値は少雨期、多雨期でそれぞれ0.55±0.42 mg N m-2 d-1、1.85±1.18 mg N m-2 d-1であり、多雨期に有意に高くなる季節性が示された。また、少雨期は地形上部、多雨期は地形下部および上部の一部でフラックスが高くなる空間分布を示した。N2Oフラックスは多雨期にWFPSと間に正の相関関係が認められ、多雨期はWFPSの分布によってN2Oフラックスの空間分布が規定されていることが示された。また、多雨期はWFPSの増大とともに、リターの分解が促進されることで林地全体に新鮮な基質が潤沢に供給されていることも、N2Oの発生を増大させる要因であると考えられた。現地基質添加実験では、硝酸態窒素の添加によってN2Oフラックスが顕著に増大したことから、脱窒がN2Oの発生に大きく貢献している可能性が指摘された。


日本生態学会