| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-318

放牧シバ草原における牛糞の分解過程とCO2放出

*五月女皓海(早稲田大・院・先進理工),小泉博(早稲田大・教育)

草原の面積は世界の陸上生態系の約40%を占める。その多くが酪農や畜産に使われている。その為、家畜動物の排泄物が草地の炭素循環に及ぼす影響を考えることの意義は大きい。本研究では、家畜動物の排泄物の影響を解明するために、「放牧牛が排泄する糞の分解過程」に注目した。

調査は、岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地に隣接する牧場に、100m×30mの調査区を設置して行った。牧場は5月末〜10月の間放牧されており、調査は放牧開始後1ヶ月おきに行った。調査区内では、新たに排泄された糞の個数、重量を測定した。さらに、調査区とは別の場所に分解速度測定用の糞を同条件で設置し、調査区内の糞の供給量と同様1ヶ月おきに重量変化、呼吸速度、全窒素量、アンモニア態窒素量の測定を行った。

調査区内の糞の供給量は、個数、重量ともに夏季に向かい増加傾向を示した。糞一個の重量変化は、排泄から1ヶ月で5〜7割ほど減少し、その後増減を繰り返しながらも減少傾向を示した。糞の呼吸速度は、時間に伴い減少した。また、呼吸速度は温度と正の相関を示したが、排泄1ヶ月後の糞のみ温度との相関がみられなかった。この理由として、他の月に比べこの月は含水率が低いことが考えられた。全窒素量は時間経過とともに増加傾向を示した。それに伴いCN比は低くなっていった。次にアンモニア態窒素に注目したところ、全窒素量に占めるアンモニア態窒素の割合は時間経過に伴い増加していった。このことから、アンモニア態窒素は分解過程後期においても残存していることが示唆された。


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