| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-322

低投入・不耕起農地におけるミミズがリン循環に果たす役割

*三浦季子,金子信博(横国大院・環境情報),小松崎将一(茨大・農)

リン資源枯渇問題とわが国の畑地の50%を占める黒ボク土の高いリン酸吸着力の観点から、肥料の投入を削減し作物のリン吸収効率を高めるためには、土壌生物とリン循環の関係を明らかにする必要がある。近年環境保全面で注目されている不耕起栽培下では、ミミズの生息密度は高く保たれる。ミミズは生態系改変者として土壌環境に影響を与えるため、農地のミミズがリンの動態に与える影響を調べることは、持続的な農地管理の上で有益な情報であると言える。本発表では、ミミズの糞が不耕起・低投入畑地土壌のリン循環に与える影響を、微生物との関係、時間経過による変化から調査した結果を報告する。調査は、不耕起・カバークロップ圃場(茨城大学農学部附属フィールドサイエンス教育研究センター、以下FSC)と、10年以上不耕起、省除草、資材低投入で農地管理を行っている自然農法畑で行った。まず、FSC土壌でミミズを飼育し、排出した糞の培養を行ったところ、培養0日の糞は細土(粒径1 mm以下の飼育土壌)よりも高い可給態リン濃度とフォスファターゼ活性を示したが、7日後の糞の可給態リンは0日より18%減少し細土よりも下回った。また、糞のフォスファターゼ活性は時間経過により低下する傾向を示した。自然農法畑では、フトミミズ科ミミズが生息しミミズの糞塊と推測される粒径2mm以上の団粒が表層土壌の60%を占めていた。また、可給態リン濃度、フォスファターゼ活性および微生物バイオマスはFSCより高く、炭素量もFSCより約50%多かった。以上の結果から、ミミズの排出直後の糞は可給態リンの増加と微生物活動の活発化を促し、不耕起・不除草という農地管理の継続によるミミズの糞団粒形成と土壌有機物の蓄積が、微生物活性を高く保ちリンの循環に寄与することが示された。


日本生態学会