| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S07-4

立山における広域大気汚染とローカルな大気汚染の影響評価

*渡辺幸一(富山県大),朴木英治(富山市科学博物館)

演者らは、北陸山岳域の大気環境を評価するため、立山の西側斜面において、微量気体成分濃度の測定、エアロゾル粒子の観測や霧水・降水中の化学成分濃度の測定を行ってきた。

立山における霧水中の化学成分の特徴として、標高の低い美女平(標高977m)より、弥陀ヶ原(標高1930m)や室堂平(標高2450m)で、pHが4以下の強い酸性の霧がよく発生していることがわかってきた。また、関東地方など大都市近郊の山岳域で発生する酸性霧中には硝酸イオンが高濃度に含まれていることが多いが、室堂平で観測される強い酸性霧では硫酸イオン濃度が高いのが特徴的である。これらのことから、室堂平の霧水を酸性化させる主な原因が、近隣の汚染源からではなく、中長距離輸送されてくる汚染物質である可能性が高いものと考えられる。また、酸性霧の発生状況や化学成分比は、年度による気象条件の違いにより、大きく異なることもわかってきた。場合によっては、夏期や秋期においても上空に存在する「バックグラウンド黄砂」の影響を非常に強く受け、酸性霧がほとんど発生しない年度もあった。さらに、立山で観測される酸性霧中には、植生に非常に有害な過酸化水素も高濃度(> 100μM)に含まれていることも多く、強い酸性物質との複合効果による植生への影響も懸念される。

美女平(標高977m)におけるオゾン濃度は、夏期には、午後に極大となる日変化が観測されたが、11月になると夜間に濃度が高くなった。夏期には、下層の汚染大気中で活発にオゾンが光化学生成されながら輸送されてくるために日中に濃度が高くなる。秋期には、高濃度の二酸化硫黄や硫酸エアロゾルとともにオゾンが高くなる現象もしばしば観測され、越境汚染の影響が大きくなることが懸念される。一方、窒素酸化物や超微小粒子についてはアルペンルート通行車両の影響も受けていることがわかった。


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