| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S09-6

ゲノム情報を活用して造礁サンゴの地理的変異を探る

井口亮(琉球大・熱生研)

近年、次世代シーケンサーの出現など塩基配列取得技術の発展に伴い、マウスやショウジョウバエなどのモデル生物に限らず、非モデル生物でも全ゲノム配列の取得が比較的容易となっている。サンゴが属する刺胞動物門は、動物界の中でも進化の基底に位置し、動物進化の解明を目的とした比較ゲノム解析の対象として早くから注目されてきた。そして現在イソギンチャクとヒドラでは大規模なESTデータベース及び全ゲノム配列が利用可能であり、またサンゴにおいてもESTデータベースの構築が既に行なわれており、近年では全ゲノム配列の取得も試みられつつある。現在こうしたゲノム情報は、マイクロアレイなどによって、サンゴ群集衰退の要因の1つとされるサンゴ白化現象の分子基盤の解明などに活用されつつあるものの、野外集団の地理的変異を解明するためのアプローチへの応用に関してはまだ未開拓のままである。本発表においては、サンゴを含む刺胞動物におけるゲノム情報の概要について紹介し、これらの情報を、サンゴ集団の緯度傾斜に対応した地理的変異を探ることや、今後の環境変動に対するサンゴ集団の適応パターンの解明に、どのように活用できるのかについて述べたい。


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