| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S10-3

生物多様性保全のために〜企業の敷地を評価する

*伊藤 俊哉(住友林業緑化株式会社・環境緑化事業部), 三輪 隆(株式会社竹中工務店・技術研究所)

企業活動において、生物多様性に直接影響を与えるものに企業が使用・管理する土地の利用がある。土地をどのように使用するかで、企業の使用・管理している土地はもちろん、周辺の土地の生物多様性にも影響を与える可能性がある。

「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」では、企業活動が生物多様性に与える影響や関係性を把握する生物多様性関係性マップの作成に取組んでおり、原材料調達と並んで工場や事務所などの土地利用が重要であるとの認識が深まっている。そして、企業にとっては数値化できないものを管理することは難しいことから、企業の土地利用の適性度を生物多様性の観点から評価する手法が求められている。また、土地利用のどこをどのように改善すべきかが事業所の従業員に理解できるようなわかりやすい指標や、土地利用改善の成果を簡便に測定できるモニタリング手法の提案も求められている。

こうした背景から、JBIBでは簡便な土地利用の評価手法の開発に着手した。そして、事業所の緑地や透水性舗装の面積、樹種などを記入し、それを元に企業の土地利用を採点する土地利用状況調査票を作成した。その調査票によりJBIBの会員企業の主な事業所の土地利用の状況を評価した試験運用の結果を紹介する。

なお、都市や郊外など異なる立地環境の事業所を対象とすることなどから、上記の土地利用評価手法のみによって土地利用が生物多様性に与える影響を説明しきれるものではなく、当評価手法は生物調査と併せて運用していく必要がある。そこで、JBIBでは社員参加型の簡易な生物調査手法の開発にも着手しており、それらを含めた土地利用評価の課題と展望についても紹介する。


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