| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S10-4

生物多様性保全のために〜カツオ資源の共同調査

杉本 信幸(味の素株式会社・環境経営推進部)

味の素グループは2009年、創業100周年を迎え、次の100年に向けて、グループ全体で「おいしさ、そして、いのちへ。」というメッセージを掲げ、「いのちのために働く」取組みを進めている。味の素グループが貢献できる21世紀の人類の基本課題は「食資源の確保」、「健康希求の充足」、「地球環境保全」の3つであると考え、事業を通じてこれらの課題解決に貢献することを、味の素グループの存在意義としている。「地球環境保全」という大きなテーマの中でも、「生態系・生物多様性の保全」、「低炭素社会の実現」、「資源循環型社会の実現」への貢献は、喫緊の重要課題と認識している。特に、世界各地において、農・畜・水産資源を活用し、バイオテクノロジーを強みとし、地域に根ざして事業展開する味の素グループの事業活動は生態系サービスに依存していることから、すべてのいのちの営みのベースである「生態系・生物多様性の保全」は、最も基本的かつ重要な取組みと考えている。

取組みの一事例として、カツオ資源の共同調査について紹介する。カツオは、風味調味料「ほんだし」の原料などとして、味の素グループが日本の漁獲量の数%を利用している。持続可能な調達・利用ができるよう、主要原料である生物資源の資源量やそれを育む生態系について知る、見守ることは基本的なことであり、サプライチェーン上の下流に位置する資源利用事業者であっても、一次産業など関連事業者や研究者などと連携した積極的な関与が重要となってきている。取組みの第一歩として、2009年度より、(独)水産総合研究センター遠洋水産研究所とともに、「太平洋沿岸カツオ標識放流共同調査」を開始し、2009年5月に奄美大島周辺海域で1,000尾の標識放流を実施した。


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