| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S11-1

外来哺乳類の防除戦略

池田透(北海道大学地域システム科学)

2008年10月に沖縄で国際シンポジウム"Control Strategy of Invasive Alien Mammals 2008(CSIAM 2008)"を開催した。このシンポジウムでは日本・NZ・UKの研究者が中心となり、10カ国の外来哺乳類管理の成功例・失敗例から得られた知見を検討することによって、侵略的外来哺乳類管理に向けた100の方法を整理した。

設定した10のセッションと、各セッションで推奨された今後日本で取り組むべき対応は以下のようにまとめられる。1)「法制度と管理方針」:根絶や管理プロジェクトを進める際の各機関と関係者の法的な責任分担を明確にすること、2)「対策の優先順位及び影響評価」:リスクアセスメントの手法を発展させること、3)「リスク管理システムと予防原則」:膨大な侵略的外来生物の輸入とその潜在的な利用という現状の改善、4)「調査研究及び順応的管理」:事業の基礎となる科学研究の体系的実施、5)「普及・啓発」:社会市場調査技術を利用して各地域で対象となる関係者に焦点をあわせて対応することの必要性、6)「管理戦略及び管理計画」:資源配置・コスト・成果等を考慮した経営管理手法の導入、7)「管理手法(ワナ、毒物及びフェンス等)」:管理手法実用化のための経験の蓄積、8)「管理手法(その他)」:防除対策用のハンター及び狩猟犬等の組織化と訓練、9)「個体群モニタリング」:長期モニタリングのための適切な指標選定と影響を受ける種の個体群モニタリングの実施、10)「間接効果と生態系アプローチ」:意思決定者や行政担当者に生態系レベルで考えることの重要性を納得させるための具体的な間接効果の例を日本の事例で示すこと。

対策に関する知識や経験の集約及び効果的手法の開発は各国共通の課題となっており、今回構築された国際的研究者ネットワークを通じてさらなる対策の進展を図りたい。


日本生態学会