| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S12-1

趣旨説明―環境疾患予防学と生態学

川端 善一郎(地球研)

ヒトや家畜や野生生物の感染症の拡大は人間を直接死に至らしめるだけでなく、経済的損失や生態系の崩壊を引き起こす可能性があり、人類が直面するきわめて深刻な地球環境問題である。感染症の拡大を未然に防ぐためには、発症の病理的メカニズムを解明するだけではなく、病原生物を生み出し、拡大させてしまう背景の理解が不可欠である。人間の環境改変が感染症の発生と拡大の原因になっている可能性がある。感染症の発生と拡大を「環境改変―感染症―人間のつながり」の視点から理解することは、甚大な被害が起こりにくくする手だてを見いだすことにつながる。このつながりを明らかにするためには、強力な生態学の基礎研究が不可欠である。遺伝子から人間を含む生態系を対象とした人間と環境の相互作用環を解きほぐす研究が必要とされている。本シンポジウムでは、いくつかの感染症の例を取り上げ、病原生物を生み出し、感染症を拡大させる人間と環境の相互作用の事例を整理し、感染症のリスクを抑えた人間と病原生物のかかわりかたを見いだすために必要な研究課題を述べる。さらに「環境疾患予防学」とも言うべき学問の創設に生態学がどのように貢献できるか、またすべきかを議論する。


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