| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S12-5

都市文化に潜むレジオネラ感染症

那須正夫(大阪大・院・薬)・一條知昭(地球研)

人類は、生存のため、また安全・安心、快適な生活を送るために環境を改変し、文化、文明を築くことができた。例えば、感染症を予防するために水道を整備し、日本において水道の普及が急速に広まった1960年以降、赤痢患者数は急減している。しかしながら、微生物生態系を理解することなく環境を改変するとき、新たな感染症の発生が懸念される。感染症を予防するためには、環境の改変による微生物生態系の変化と感染症発生、そして社会との関連を総合的に理解することが重要である。私たちは、水環境の改変により引き起こされていると考えられる、レジオネラ症と非結核性抗酸菌症について研究を進めている。

レジオネラは自然環境中に広く存在するが、水を循環使用する環境においてしばしば急増し、アウトブレイクが発生している。日本においては、温泉や24時間風呂でのレジオネラ感染が問題となり、世界的にはホテルやクルーズ客船、スパなどでの感染も多く、旅行者感染症としても社会的に重要な課題である。

非結核性抗酸菌症は患者報告数が1990年代以降先進国を中心に増加し、水環境からの暴露が感染の要因と考えられているものの、いまだその感染経路は明らかとなっていない。

本発表では、分子微生物学的手法により細菌と水環境との関係を検討し、感染症発生との関係、さらにはその予防について考えていきたい。


日本生態学会