| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S12-6

コイヘルペスウイルス感染症と人間の相互作用環

源利文・本庄三恵・内井喜美子・山中裕樹・鈴木新・神松幸弘(地球研)・米倉竜次(岐阜県河川研)・大森浩二(愛媛大・沿岸環境研究センター)・板山朋聡・田中伸幸(環境生態工学研究所)・浅野耕太・白江祐介(京都大・院・人間・環境)・奥田昇(京都大・生態学研究センター)・川端善一郎(地球研)

総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「病原生物と人間の相互作用環」では「人間が引き起こす環境改変が感染症の拡大を招く」という仮説に基づいて、「人間による環境改変−感染症の発生・拡大−人間生活の変化」の相互作用環を解明することを目的として研究を行っている。一般に感染症の研究は病理や治療法にスポットが当てられ、その基盤となる病原体や宿主の生態にはあまり注意が向けられてこなかった。そこで我々は病原体や宿主の生態を明らかにすることで上述の仮説を検証する取り組みを行っている。本講演ではプロジェクトの具体的な研究ターゲットの一つであるコイヘルペスウイルス(KHV)感染症について、我々の取り組みと最新の成果を紹介する。KHV感染症は2003年に国内で初めて発生が確認され、2004年には琵琶湖において10万匹のコイ(Cyprinus carpio)が犠牲となる大アウトブレイクを起こした。コイの大量死は経済的な影響とともに水域生態系全体への影響も懸念され、KHVやコイの生態学的研究はそれ自体が重要な研究課題でもある。これまでの研究の結果、湖岸環境改変による水温変動、環境水温に対するコイの行動特性、KHV感染症発生の数理モデル、琵琶湖やその他の淡水域におけるKHVの季節動態、コイのサイズと抗体価から見たKHV感染症の拡大要因、水温変化に対するコイのストレス応答、コイ大量死の社会的影響などが明らかになった。これらの結果を元に環境改変とKHV感染症のつながりについて議論したい。


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