| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S13-5

里山の新たな保全制度としてのMAB生物圏保存地域の可能性

大澤雅彦(日本自然保護協会)

ユネスコのMAB計画は日本も当初から積極的にかかわり多くの貢献をしてきた。この国際研究計画はいくつかの大きな変革を経ながらも、その自然保護のための手段として考案された生物圏保存地域(生物圏保護区)は当初から一貫して発展し続けて現在では世界で550か所以上の保護区ネットワークを構成し地球規模での生物圏の保護に役立っている。そのゾーニングシステム(核心地域、緩衝地域、移行地域)はその後のさまざまな保護区デザインの基本的な考え方として引き継がれてきた。自然の保全と人々の生活の発展(福祉)を両立させるという考え方は、保護区を作るためにそこの住民を排除するといった発想を真っ向から否定し、保護区は人々の生活の向上をもたらすものでなければならないと宣言し、自然保護と同時に人々の生活の向上を目指すという視点は自然保護の基本原則となった。2001~2005年に行われたミレニアム生態系評価ではその点がさらに強調され、人々の生活向上のために自然を保護し、それから受ける恩恵を最大にするという生態系サービスという概念を定着させた。もともと生物圏保存地域のゾーニングシステムは、厳正保護の核心地域、保護のための研究教育を目指す緩衝地域、保護区を支える人々の生活の場としての移行地域という配置を想定しているが、これは実は日本の里山での伝統的な土地利用のパターンを模したような空間構造になっている。


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