| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S19-3

樹木の肥大成長と気候変動 〜地理的クライン検出の試み〜

中川弥智子(名大)

近年の温暖化や降水量変化などの気候変動が、生態学的現象に与える影響について、現在まで様々な生物を材料に多くの研究がなされてきた。樹木では、繁殖や生育に重要である開花・結実や展葉・落葉などのフェノロジー(生物季節)が早まる、または遅くなることが報告されているだけでなく、その成長速度にも大きな影響があることが最近明らかになってきた。肥大成長の経年変化の検出は、年輪データの解析に基づいた、1種〜複数種の樹木を対象にしたものが多い。しかし、高木・低木に関わらず比較的容易にかつ精度高く測定できる周囲長は、日本各地に数多くあるプロットで継続的に測定されている項目の1つであり、そのデータは着実に蓄積されてきている。また、気候変動が肥大成長に与える影響は樹種によって異なると予想されるが、群集レベルでの森林帯によっても異なる可能性が考えられるものの、広域でその影響を調べた研究はまだ少ない。

そこで本発表では、多くの研究者の協力により得られた、北海道から宮崎県までの20プロットにおける樹木の周囲長データを用いて、近年の気候変動が群集レベルでの樹木の肥大成長に与える影響を、地理的スケールで検出することを試みた結果を紹介する。本発表が、このシンポジウムのねらいでもある、プロット間ネットワーク研究の多角的な展開のきっかけになれば幸いである。


日本生態学会