| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T11-4

伊豆諸島に分布するオオシマザクラの分子系統地理

加藤珠理(森林総研)・岩田洋佳(中央農研)・津村義彦(森林総研)・向井譲(岐阜大)

伊豆諸島を主な分布域とするオオシマザクラについて、島間及び、伊豆半島と島の間での集団間遺伝構造を評価するため、母性遺伝する葉緑体DNA(シーケンス)と両性遺伝する核DNA(AFLP、SSR)の多型の比較解析を行った。7集団(伊豆半島、大島、新島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島)408個体を分析した結果、葉緑体DNAのシーケンス解析では8個のハプロタイプが検出され、AFLP分析では64個の多型フラグメント、SSR分析では11座で計154個の対立遺伝子が検出された。AMOVA解析の結果は集団間の遺伝変異が、葉緑体DNAでは16.55%、AFLPでは15.04%、SSRマーカーでは7.45%となった。葉緑体DNAの遺伝的分化は、八丈島より北側に位置する島々と伊豆半島の間で小さいことから、種子を介した遺伝子流動が十分に起こっている可能性が示唆された。分子系統樹やSTRUCTURE解析の結果は、各島の位置関係や地質的な特徴を反映するものであった。また、伊豆半島にはオオシマザクラの他、ヤマザクラなどの近縁種も自生しており、雑種個体もみられる。近縁種との交雑はオオシマザクラ集団の遺伝構造に影響を与えていると考えられ、遺伝子移入が起こっている可能性が示唆された。


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