| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T12-3

データロガーによって調べたカワウの採餌生態

佐藤克文(東大海洋研)

目的)カワウによる漁業被害を把握するためには,繁殖中のカワウがいかにして餌を捕らえているのかを明らかにする必要がある.繁殖巣を中心として数キロメートル以上の行動半径を持つと思われるカワウの採餌行動を調べるために,動物搭載型記録計(以後データロガー)を用いた野外調査を実施した.国内で初めて得られたカワウの採餌行動に関する時系列データを元に,繁殖期間中の採餌行動について記述する事ができた.

方法)経口麻酔薬(アルファクロラロース)をオブラートに包み,ワカサギなど10cm程度の細長い魚の口腔内に入れ,繁殖巣に1匹を置いた.巣内にいた成鳥は人間のコロニー内への侵入時に一旦飛び立ち巣から離れたが,15分から30分程度で帰巣した.帰巣した際,約半数の個体が巣内にある魚を見つけて食べた.食べた個体はその後不活発になり,60分で不動化した.不動化した個体を手捕りし,体重測定を行った後に背部に装置を取り付けた.取り付けた装置は遠隔切り離し受信器・切り離しケーブル・加速度記録計からなる.装着後2日目以降に装着個体が巣にいることを約50m離れた位置から確認し,切り離し信号を送信することによりケーブルタイを切断し,巣の下に落ちた装置を回収した.

結果・考察)愛知県内の繁殖コロニーにおいて数個体からデータを得る事が出来た.得られたデータによると,装置を取り付けた日は終日採餌旅行に出かけず,翌朝4時台から巣を飛び立ち採餌旅行に出かけた.繰り返し潜水を行った後に飛翔により巣に戻ってくるまでの様子が記録されていた.深度2メートルから6メートルほどの潜水バウトと深度50センチメートルのごく浅い潜水バウトを織り交ぜて行う個体や,深度15メートルもの深い潜水を繰り返し行う個体がいた.カワウは川だけでなく海も含めた幅広い場所で採餌する事が判明した.


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