| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T14-4

「メタ群集における共進化と食物網構造: 多種の捕食ー被食群集モデル」

*山口和香子(東北大), 大野ゆかり(東北大), 近藤倫生(龍谷大), 河田雅圭(東北大)

食物網における多種共存を可能にしているのは、どのような食物網構造、あるいは生物の性質なのだろうか?この問題の解明は生態学における重要なテーマである。近年、捕食者―被食者間の共進化が群集構造に影響を与えうること、また逆に、群集構造がそのような共進化の動態に影響を及ぼすことが示唆されている。しかし、これまでの共進化研究は1種対1種の関係に着目したものが多く、複数種間で起こる拡散共進化を扱った研究はまだ少ない。また群集生態学においては、捕食―被食相互作用のリンクのパターンや強さの変化が、群集の動態、共存種数に影響を与えることが示されている。従来の理論研究では、捕食者の餌利用形質や被食者の防御形質あるいは両者が適応的に変化することによるリンクの変化を仮定したものが多い。明確な進化プロセスを仮定したモデルでは、捕食者による相互作用の進化的変化しか扱われていない。

また局所群集間では移動分散が起こっており、局所群集への種や個体の供給、局所群集間の種構成・動態のちがいを消失させるなどの効果をもつ。また局所群集内ではしばしば局所適応が起こっているが、局所群集間の移動分散にともなう遺伝子流動は、局所群集へ適応的あるいは不適応な遺伝的変異を供給したり、メタ群集全体の遺伝的変異を減少させたりすることで、局所適応に影響を与えると考えられる。

今回は、多種間での共進化と群集構造、さらに局所適応に関するこれまでの研究をレビューする。また私たちが現在取り組んでいる、個体ベースモデルによるシミュレーションを用いた、捕食―被食相互作用の共進化、さらに局所群集間の移動分散が、局所群集の動態や共存種数、局所適応にどのような影響を与えるかについての研究も紹介したい。


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