| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T18-2

日本列島とその周辺のトカゲにおける地域固有性の形成と破壊

岡本卓(環境研)・栗山武夫(東邦大・理)・疋田努(京大・院理・動物)

日本列島と伊豆諸島には,近縁な3種のトカゲ(オカダトカゲ [伊豆半島〜伊豆諸島],ニホントカゲ [西日本],未記載種 [東日本])が側所的に分布している.これらは,日本列島の形成時に起源する古い系統と考えられている.それぞれの種内にも地理的的変異が認められ,特に伊豆諸島では著しい形態的・生態的変異が知られている.分子系統学的解析から,これらの多様化の歴史は,日本列島で約400万年,伊豆諸島内では約100万年に渡ると推定された.

このような地域ごとの固有性が,伊豆諸島において少数の外来生物により破壊されつつある.三宅島・八丈島・青ヶ島では,1950年代以降に放獣された外来種ニホンイタチの捕食圧により在来種オカダトカゲは激減した.三宅島での調査から,約10年でトカゲの密度は1/1000以下に低下し,食物網の構造も大きく変化したと考えられている (Hasegawa,1999).加えて,八丈島への新たな外来種としてニホントカゲの定着が新たに確認された.これまでの調査結果から,外来トカゲは九州に由来し,2003年頃までに移入され,その後増加傾向にあると考えられ,すでに島の1/4程度の地域では外来トカゲのみが分布するという状況にある.この事例では,各地域・島嶼ごとの固有性の形成には数百万年かかった一方で,わずか数十年でその一部が修復困難な打撃を受けたことになる.


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