| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T18-4

アルゼンチンアリ大航海:DNA解析による遺伝構造の解明と侵入経路の推定

井上真紀(環境研)・伊藤文紀(香川大・農)

近年の世界経済のグローバル化と自由貿易の促進によって、物資や人の国際移送に伴う外来生物の侵入・定着は増加し続けており、侵略的外来生物の問題はますます深刻化している。なかでもアルゼンチンアリは、世界中に侵入し、生態系や農業に甚大な被害を引き起こしており、IUCN世界侵略的外来種ワースト100にも掲載されている。日本では、1993年に広島県ではじめて侵入・定着が確認され、その後各地で発見されている。本種はすでに特定外来生物に指定されているが、侵入・分布拡大を阻止するために、その侵入ルートを予測し効果的な検疫体制を構築する必要がある。近年、分子遺伝学的手法によって、侵入生物の侵入ルート推定が推し進められている。一方、世界経済の貿易構造の変化が、侵入生物の随伴移送に大きく影響すると考えられるものの、社会経済学的要素を考慮した侵入ルート推定の事例は少ない。本講演では、まず外来アリ類を運ぶ媒体や経路について先行研究をレビューする。また、著者によるアルゼンチンアリ侵入個体群におけるミトコンドリアDNAを用いた遺伝解析の結果を紹介する。最後に、アルゼンチンアリの分布拡大プロセスについて、世界貿易構造の変遷に関連させて著者らが収集した情報をもとに解説する。


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