| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T20-4

滋賀県における水田水生昆虫普通種の分布状況とその成因

日鷹一雅(愛媛大・農)・向井 宏(京大)・中西康介(滋賀県立大)・本林 隆(農工大)・横山(大阪府大)

これまで滋賀県における淡水生物の研究は、琵琶湖とそれにつながる水系について魚介類、流水性水生昆虫などで多くの学術的情報が蓄積されている。しかしながら、水田内の止水性昆虫類に関しては生息分布状況についてまとまった報告は少ない。そこで演者らは、琵琶湖一周に配置された調査定点水田(大塚らの発表)を中心に、一定の手法によって定量的な密度分布調査を実施し、最近の関係者の知見も総合化して、滋賀県の水田水生昆虫の現状について報告する。湖東、湖西、湖北に大まかな3地域に分けてみると、湖東がやや採集種数においても他地域に比べ少ない傾向を示した。水田水生昆虫のRDB種の代表種であるタガメ Kirkaldyia deyrolli 、ゲンゴロウ Cybister japonicus の生息は全く記録できなかった。大型種では、甲虫類ではガムシ Hydrophilus acuminatus 、クロゲンゴロウ Cybister brevis 、カメムシ目ではコオイムシ Appasus japonicus 、タイコウチ Laccotrephes japonensisは広く分布していた。また、甲虫目のHydrochara、Sternolophus、Hydaticus、Colymbetinaeに属する中型種、あるいは Laccophilus、Noterus、Berosus、Haliplidaeなどに属する小型種が県内の水田地帯に普通に分布していた。これら滋賀県内で普通に見られる水田水生昆虫は、近隣県や他の地域において広範囲に水田で近年採集できなくなっている場合がある。全国分布種で普通種とされるヒメゲンゴロウを取り上げて、殺虫剤感受性の知見と環境保全型農業行政の関連性について論じ、滋賀県における水生昆虫相の成因について言及する。


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