| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T23-1

趣旨説明:生物群集理解の基本的枠組みと問いかけ

近藤倫生(龍谷大・理工,JST・さきがけ)

生物群集とは特定の生息地に共存する生物個体群の集合である。群集生態学は、生物群集において、どのようなパターンが、いかなる機構によって生じるのかを明らかにしょうとしている。研究の対象となる生物群集のパターンは、種数、種間相互作用ネットワークの構造、あるいはそれらの時空間パターン等、多岐に渡る。

これらの研究の発展において、重要な役割をもつことになった「生物群集観」がある。それは、種間相互作用によって駆動される個体群動態の帰結として生物群集を理解する考え方である。この考え方のもとでは、生物群集の構造と個体群動態が互いに影響を及ぼし合いつつ、両者が共発展的に変化するというフィードバックが想定されている。一方で、生物群集の構造は、種間相互作用やそこから生じる間接効果を通じて、個々の生物種の個体群動態に影響を与える。他方、個体群動態によって生物種の局所的な絶滅や加入が生じ、生物群集の構成メンバーが変更すると、それは生物群集の構造変化につながる。この両者がフィードバックし、個体群と群集の動態の両者を駆動すると考えるのである。この考え方は、現代の群集生態学におけるひとつの主要なパラダイムであると言っていいだろう。実際、先に提示した群集生態学の諸問題の多くは、この理論的な枠組みのもと研究されてきた。たとえば、種数は、種間相互作用をはじめとする種間相互作用によって駆動される個体群動態によって生じる局所絶滅過程と関連づけられてきた。あるいは、種間相互作用ネットワーク研究も同様に、多種の共存を可能にするような構造の探索を中心に発展してきた。

この群集生態学におけるパラダイムは、新たな知見のもとで、どのように発展し、見直されていくのだろうか?群集生態学における生物群集間に関して具体的な問題提起をおこない、本企画集会の緒言とする。


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