| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T29-2

近縁オサムシ2種による モザイク交雑帯仮説の検証

*大澤剛士(神戸大・院),高見泰興(神戸大),丑丸敦史(神戸大)

近縁種が二次的に分布を接すると,側所的分布を保ちつつ,その境界域で交雑帯を生じることがある.交雑帯を維持するメカニズムは,(1)雑種個体の移動分散能力と,雑種形成に対する負の淘汰のバランス(tension zone model)と,(2)環境の空間的異質性とそれに対する環境選好性・適合性の違い(mosaic hybrid zone model)が考えられる.それぞれのメカニズムは互いに排他的ではなく,交雑帯では双方が同時に作用することもありうるが,両者を定量的に評価した研究は少ない.

広域を対象としたニッチモデルの構築は,生物の環境選好性を定量評価しうる点でmosaic hybrid zone modelの検証に役立つと期待される.そこで本研究は,近畿地方において交雑帯を形成する近縁オサムシ2種についてそれぞれニッチモデルを構築し,その環境要求性の違いを検討することで,mosaic hybrid zone modelの検証を試みる.検討に用いるマヤサンオサムシとイワワキオサムシの交雑帯は,微視的(small grain)には tension zone model に適合することが明らかになっている.一方,両種の交雑帯は巨視的(large grain)にモザイク状になるが,その決定要因は明らかになっていない.

発表を通して,進化生態学における景観生態学的アプローチの有効性について議論したい.


日本生態学会