| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-05

生物多様性優先保全地域の選定手法開発ー島嶼のスダジイ群落での事例

*郡 麻里(首都大院・理工・生命・客員研究員), 可知直毅(首都大院・理工・生命)

生物多様性を保全する手段の一つに重要保全地域の選定が有効であることは既に多くのNGOやIUCN等による生物多様性ホットスポットの概念などで明らかとなってきている。しかし、日本列島全体がホットスポットに該当していたり、実際に線を引くに当たり人の居住区が含まれる等、スケール上多くの課題が存在する。これまでWWFによる南西諸島の重要地域マッピング、Birdlife International によるImportant Bird Area、Conservation InternationalによるKey Biodiversity Area、WIJによるラムサール条約の候補地としての重要湿地等が提案されている。これらは各自の対象主体に応じた選定地域がマッピングされており、ある特定の分類群に対象が偏りがちではあるが、ハビタットの保全は多くの生物を同時に守れるため最も効率的な手法と思われる。一方、生物保全においては分布データの整理が追い付いておらず、絶滅危機の回避には緊急を要し、より効率的な優先順位を付けた対策が求められる。本研究では、既存の保護地域の境界線を活かし、漏れのある地域を抽出し、それらにおいて、特定外来生物による被害が及んでいる地域、分布北限種、南限種、地域固有種などの生息環境を考慮した、新たな優先保全地域を選定する手法を伊豆諸島をモデルに開発している。既存の自然環境情報、空中写真・衛星画像解析により、植生自然度が第3回自然環境保全基礎調査において8以上であった地域において、植生の劣化が顕著な部分をGISで抽出し、よりインパクトの大きいと思われるエリアを抽出した。 植生自然度10の地域はすでに自然環境保全指定地域に含まれている場合が多く、植生自然度の8から9レベルの群落においてより保護・保全の必要な生物群が見られ、集中して対策をとる必要があると考えられた。


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