| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-07

気候変動に伴ったアフリカ植生変化におけるmigration過程の影響:シミュレーションによる検討

*佐藤永(名古屋大・環境学),伊勢武史(海洋研究開発機構)

動的全球植生モデルは、変動する気候環境下の陸域生態系の分布と機能を予測するシミュレーションモデルである。現状において、すべての動的全球植生モデルが、新しい気候区に適した植物種(または植物機能型)が直ちに侵入・定着できることを仮定している。この仮定により、植生変化の速度は実際よりも過大に予測されてしまう可能性が指摘されている。そこで本研究では、動的全球植生モデルSEIB-DGVMに、植物種の侵入と定着のしやすさを単純なパラメーターとしてモデルに導入し、このパラメーターが陸域生態系の分布と機能の予測に与える効果について、アフリカ大陸における今世紀中の植生変化を対象に、感度分析を行った。その結果、年降水量の増加に伴って大陸の東方に森林生態系が拡大するトレンドが予測されたが、その速度は侵入定着パラメーターに強く依存した。また、この拡大速度の違いは生態系機能にも大きく影響し、例えば生態系炭素量(生物量+土壌有機物)に関しては、侵入定着の最も容易な条件で現状とほぼ同じ、最も厳しい条件で0.2kg C m-2(大陸全体の平均値)減少すると予測された。


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