| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-08

北海道オホーツク海側の流紋岩地におけるミズナラ林の種組成と立地

*板垣友規子,星野義延(東京農工大・院・農),佐藤謙(北海学園大・工)

ミズナラ林は北海道の代表的な森林植生であり,星野(1998)は9つの群集を報告している.しかし,オホーツク海側の一部にある流紋岩地には,既報とは構成種の異なるミズナラ林の分布が指摘されており(佐藤,1996),種組成や成立立地の詳細を明らかにする必要がある.本研究では,①オホーツク海側の流紋岩地におけるミズナラ林の種組成の特徴と,②群落の成立を規定している環境条件の2点を明らかにすることを目的とした.

調査は,流紋岩が分布する湧別川流域とその周辺域で行い,調査地の選定には,①斜面傾斜30度程度の斜面上部~中部,②露頭があり地質が流紋岩であるか否かが判定可能,という2つの基準を設けた.2003年〜2010年の間にミズナラ優占林を中心とした林分107ヶ所で,植物社会学的手法を用いた植生調査を行い,地質の判定と土壌調査(断面記載,深さ5~10cmの三相組成,pH(H20),EC(μS),強熱減量(%)),林齢の調査を行った.

表操作法により群落の識別を行った結果,3つの群落(ミズナラ-エゾママコナ群落(以下A群落)(n=34),ミズナラ-マイヅルソウ群落(以下B群落)(n=69),ハルニレ群落(n=4))に分けられた.このうち,ハルニレ群落を除いた2つの群落について,既報の群集との比較を行った結果,A群落が既報の群集とは異なる構成種をもつミズナラ林と考えられた.A群落とB群落との立地の比較を行った結果,A群落は流紋岩地,南〜西向き斜面,ミズナラ優占林に偏り,分布標高域,群落高,pH,EC,液相率が低めであった.林齢には差がみられなかった.つまり,流紋岩地は崩壊しやすく土壌の発達が抑制されること,南〜西向き斜面では日射量が大きく,土壌が乾燥しやすいこと,冬季の積雪が妨げられることなどが影響していると考えられた.


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