| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-03

キビタキの採食方法における性差

*岡久雄二(立教大・院・理),森本元(立教大・理),高木憲太郎(バードリサー チ)

キビタキFicedula narcissinaは東南アジアで越冬し,日本とその周辺で繁殖する渡り鳥で,性的二型が明瞭である.体サイズや翼形態に性的二型がある鳥では,採食方法の性差が報告されているが,キビタキの採食方法の性差については,まだ十分な研究が行なわれていない.そこで,我々はキビタキの採食方法における性差を調査した.調査は2009年と2010年の2年間,本種の繁殖期である4月~8月に山梨県の富士山原始林において行った.ルートセンサスで発見した個体を5分間観察し,その間の採食方法を記録した.採食方法はホバリング,飛びつき,摘み取り,フライキャッチの4項目に分類した.その結果,ホバリングと摘み取りによる採食の頻度に性差が認められた.雌は雄よりもホバリングを多く行い,雄は雌よりも摘み取りを多く用いていた.ホバリングの頻度には季節変化があり,5月下旬から6月にかけての抱卵・育雛期に多く観察された.他の森林で繁殖する昆虫食の渡り鳥でも雌が産卵期から育雛期にかけてホバリングによる採食を多く行うことが報告されている.これらの鳥類では,主に雌が抱卵や育雛を行なうため,雄よりも短い時間で餌を探索し採食する必要がある.ホバリングによる採食では,隠れた虫を探すため,狭い範囲で採食をすることができ,探索時間がかからない採食方法である可能性がある.一方,雄はソングポストで囀り,巣から離れた箇所を移動して回る.囀りの合間に周囲を探餌してまわることができるため,摘み取りによる採食が多いと考えられた.


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