| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-01

同位体が解き明かす熱帯雨林のハチ目とシロアリ目の食性

*兵藤不二夫(岡山大・異分野コア), 竹松葉子(山口大・農), 松本崇(京大院・人環), 乾陽子(大教大・教養), 市岡孝郎(京大院・人環)

ハチ目(アリ、ハナバチ、カリバチ)やシロアリ目の熱帯生態系における役割は広く認識されているにも関わらず、その食性は十分に分かっていない。本研究では、その食性を明らかにするために、マレーシア、サラワク州の熱帯雨林で採集されたハチ目(12科、16属以上、32種以上)、シロアリ目(1科10種)の炭素窒素安定同位体比を測定した。これらの昆虫の同位体組成を同じ調査地で採取された他の消費者と比較した。これらの昆虫の窒素・炭素同位体比は他の消費者の値と大きく重複しており、多様な炭素・窒素源を利用していることを示している。アリとシロアリの窒素同位体比は、それぞれ植食性(甘露や花蜜への依存)から捕食性へ、そして木材食性から土壌食性へと連続的に変化する食性を示した。さらに、カリバチの窒素同位体比も-0.1‰(Braconidae sp.)から8.6‰(Bembix sp.)へと大きく変動し、雑食性から捕食性へと食性の幅を持つことを示唆している。アリの一種Componotus gigasは、その餌源の多くが甘露であるにもかかわらず、植食者ではなく腐植食者や雑食者と近い炭素同位体比を示した。このことは、このアリは炭水化物がエネルギー源として利用し、その炭素同位体比は体に保持されないことを示唆している。軍隊アリLeptogenys diminutaと土壌食性シロアリDicuspiditermes nemorosusの窒素・炭素同位体比は有意に異ならず、栄養段階と食物の腐植過程が共に陸上消費者の同位体比を上昇させるうることを示している。


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