| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-04

日本の森林における地表徘徊性甲虫群集の地理的・季節的変異:モニタリングサイト1000森林・草原調査より

*丹羽慈・岸本年郎(自然研)

地表徘徊性甲虫類の群集組成は、生息地の物理環境、植生、土地利用、伐採等の撹乱などによって変化することが知られている。環境省のモニタリングサイト1000プロジェクトでは、気候変動等による森林生態系の変化を察知するための指標生物群として、全国の森林サイトにおいて地表徘徊性甲虫類のモニタリング調査を実施している。今後、長期的なモニタリングデータから気候変動の影響を検討するにあたり、季節変化や地理的な気候条件の変化にともなう群集組成の変化パターンを理解しておくことは重要である。そこで、モニタリングサイト1000の調査データを用いて、地表徘徊性甲虫群集の地理的・季節的変異の解析を行った。北海道から沖縄の天然林を中心とする33調査区における、2005~2009年度の年4季節のピットフォールトラップ調査のデータセットから、オサムシ科、ホソクビゴミムシ科、ハンミョウ科、センチコガネ科、シデムシ科、ハネカクシ科の体長6mm以上の徘徊性種の成虫の採集個体数を集計し、解析対象とした。全種数、個体数は、高緯度・低温・少雨の調査区ほど大きい傾向がみられた。一方、種の均等度、多様度は、中程度の気温の地域(東北、関東、佐渡など)で高い傾向にあった。各調査区の群集は、属組成によって大きく5つの地域グループ(北海道、東北・関東、中部亜高山帯、東海・近畿・四国、九州)に分けられ、年平均気温によって属組成が特徴付けられている可能性が示された。また、属によって成虫の出現ピークの時期が明瞭に異なる場合があり、4~8月と9~12月とで属組成が大きく異なった。一部の属では、ピーク時期と年平均気温との間に関係が見られた。これらの結果より、地表徘徊性甲虫類の群集組成やフェノロジーの変化に注目することで、温暖化等による生態系の変化をより鋭敏に検出できる可能性がある。


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