| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-10

半島マレーシアにおける一斉開花の地理的分布様式

*沼田真也(首都大・都市環境),安田雅俊(森林総研・九州),Nur Supardi Md. Noor (FRIM・R&D) ,Christine Fletcher (FRIM・森林部) ,Mazlan Hashim (UTM・地理情報)

東南アジア熱帯林には一斉開花と呼ばれる現象が見られ、数年に一度の頻度で多様な樹木が同調的に開花、結実を行う。この現象を通じて多くの樹木が世代交代するため、東南アジア熱帯林の保全、修復、復元等において極めて重要な現象といえる。この一斉開花の発生には外的シグナル、すなわち異常気象が重要な役割を担うと考えられており、ボルネオのいくつかの森林では不定期に発生する異常乾燥と一斉開花の関連性が報告されている。しかし、半島マレーシアでは高頻度に異常乾燥が発生しており、異常乾燥だけでは一斉開花の発生をうまく説明できない。これらは、一斉開花と気象要因の関係には地理的変異があり、それぞれの地域で異なる発生メカニズムがある可能性を示唆する。本研究は半島マレーシアの一斉開花の分布と異常気象の関連性を明らかにすることで、一斉開花の地理的特性を明らかにすることを目的とする。まず、Burgess (1972)により用いられた1925年から1970年まで州ごとに記録された結実情報と2001年から2010年までの約90箇所で実施した結実調査の結果について、クラスター分析を用いて分析し、一斉開花の地理的特性を検討した。また、半島マレーシアの14カ所の気象観測所気象データを分析し、複数の気象条件における地理的様式についても検討した。その結果、Burgessのデータからは3つの地理的グループに分けられたが、2001年以降の結実については明瞭な地理的特徴は見いだせなかった。一方で、気象条件の発生様式については地理的特徴が見いだされたものの、その様式は季節や気象要因間で異なっていた。講演ではこれらの関連性について議論する。


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