| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-07

系統比較法から明らかになったアリ共生型アブラムシの増大したwing loading

八尾泉(北大・農)

Tuberculatus属アブラムシは,同属内にアリ共生型と非共生型を含み,季節・密度・アリ共生に関係なく,成虫はすべて有翅虫になる。昨年の講演で,アリ共生型アブラムシT. quercicolaは野外でほとんど飛翔しておらず,局所的な分集団を形成していることを,トラップ実験とmicrosatellite DNAによる集団遺伝解析から明らかにした。飛ばないのに,なぜ翅を持つのか?翅形成・維持のコストを考慮すると,翅を消失し産子数を増加させた個体が選択上有利になるはずである。同種内に翅を持つタイプと持たないタイプが存在する翅二型性は,多くの昆虫で報告されており,その適応的意義を生涯繁殖数や好適環境の継続性で説明している。本種に翅二型性はないが,非飛翔性がもたらす適応的意義は翅二型性を持つ昆虫類に類似していると考えられる。本研究では,国内のTuberculatus属20種(アリ共生型9種・非共生型11種)のwing loading(体サイズ/翅面積)を計測し,カテゴリ化したアリ共生・非共生との相関を検討した。種間比較には,ミトコンドリアCOI (940bp)とND1(377bp)から分子系統樹を作成し,系統的交絡を除去した方法を用いた。その結果,アリ共生型アブラムシのwing loadingは非共生型より大きくなっており,栄養資源を翅形成より胚子数増加に充てたために,翅面積に比して体サイズの大形化が起きていると考えられた。


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