| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J1-07

開花時期に伴い変動する複数訪花者の送粉貢献

*坂本亮太,森長真一,伊藤元己(東大院・総合文化),川窪伸光(岐阜大・応用生物)

季節推移に伴い変化する送粉者相の量や構成は,顕花植物の繁殖成功に大きく影響する。これまでにも特定昆虫の行動や訪花昆虫相の季節変動と,植物繁殖成功の季節変動との関連性が指摘されてきた。しかしながら複数種の昆虫が訪花する場合,昆虫分類ごとの種子生産に対する貢献を分離できなかったため,季節推移に伴った各昆虫分類における送粉貢献の変動は把握されていない。

そこで我々はクサギにおいて,アゲハチョウ属,ホシホウジャク,キムネクマバチの送粉貢献を分離して推定できる「ネットがけ処理」を開発した。アゲハチョウ選択排除と自然条件との種子生産率(種子数÷胚珠数)の差異をアゲハチョウ送粉貢献として,アゲハチョウ選択排除とアゲハ・ホシホウジャク同時排除との差異をホシホウジャク送粉貢献として,同時排除下での種子生産をキムネクマバチ送粉貢献として推定した。開花時期ごとでクサギ種子生産率を算出し,開花時期に伴い変動する3分類昆虫の送粉貢献を推定する。

そのためにまず,調査群落で開花した全ての花を個体識別し,果実・種子生産量を把握した。その後,開花時期全体を7日ずつの5週に分け,各昆虫分類の送粉貢献を比較した。

その結果,開花週ごとで訪花昆虫相の量および構成は大きく変動したにもかかわらず,自然条件下での種子生産率は有意には変動しなかった。一方で,アゲハチョウ属排除下・同時排除下での種子生産率は週ごとで有意に変動した。アゲハ送粉貢献は同属昆虫の訪花量が多い週でのみ検出されたが,訪花回数が多くとも,クマバチ送粉貢献が大きい週では検出されなかった。加えて,ホウジャク送粉貢献はどの週でも検出されなかった。これらの結果は各訪花者の送粉貢献は,その週の訪花量に対して相関するのではなく,他昆虫が有する送粉貢献から影響を受け,開花時期ごとで変動することを示している。


日本生態学会