| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J1-12

遺伝子発現解析を用いた多年生ハクサンハタザオの温度依存開花機構の解明

*鹿嶋一孝(北大・環境), 小笠原希実(北大・医), 鈴木悠也(北大・理), 工藤洋(京大・生態研), 千葉由佳子(北大・創成), 佐竹暁子(北大・創成)

植物は移動による環境選択ができないため、周囲の環境に応答して生長・繁殖などの活動をおこなうしくみが発達しているが、外部に表れる応答に先立って遺伝子発現量などの内的状態が変化する。そのため、温度や日長の変化に応じて開花・結実をする場合においても、遺伝子間ネットワークによる遺伝子発現の制御が重要であると考えられる。多回繁殖型多年生植物ハクサンハタザオは春に開花するが、冬の温度低下や春の温度上昇に応答して花成関連遺伝子の発現量を調節することが知られている。ハクサンハタザオは北海道から九州まで広く分布しており、温度シグナルへの応答形式を生育環境に適応させていると予想されるが、その仕組みは明らかでない。本研究では兵庫県と北海道由来のハクサンハタザオを材料に花成関連遺伝子発現量の季節的変化を解析し、温度依存型開花機構の地理的変異があるかを調べた。また兵庫県と北海道に由来するハクサンハタザオの遺伝子発現量を比較することで、生育地とは異なる温度条件への応答機構を明らかにする。2集団由来の個体を5~20℃℃の温度条件で1~8週間栽培し、春化経路の中心となる花成抑制遺伝子 FLCの発現量の変化を調べた。両集団とも10℃以下の条件において遺伝子発現量の経時的な低下が見られたが、低下速度は処理温度が低いほど速かった。また、これらの応答に系統間の差異は見られなかった。以上からハクサンハタザオでは温度シグナルの量的な変化に対応してFLCの発現を調節するが、少なくとも供試した2集団間では発現量変化の差は見られないことが明らかになった。さらにFLCの上流に位置するVIN3および下流のFTの発現量および開花・結実イベントとの関連について報告する。


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