| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-008

焼畑がチーク択伐天然林の種組成と森林構造に与える影響

*野草俊哉,神崎護(京大院・農),福島万紀(科学技術振興機構特別研究員),SoeMinTun,HlamaungThein(Forest Department,Myanmar)

現在天然チーク林はミャンマーにしか残っておらず、その大部分がチーク択伐を行う保全林として管理されている。近年その保全林内で焼畑が行われている可能性が示唆されており、天然チーク林への影響が懸念されている。しかしこれまで保全林内での焼畑の実態に関する調査研究はない。そこで本研究では焼畑が天然チーク林に与える影響を解明することを目的に、ミャンマー連邦中部バゴー山地カバウン保全林(78046ha)で事例調査を実施した。

同保全林を対象に、1994年から2006年までのJERS画像3枚とLandsat画像8枚を解析して焼畑地の抽出を行った。

焼畑は局所的に行われており、保全林の境界部分の3区域と,保全林内部の2区域に集中していた。また同保全林における1年あたりの焼畑面積は全体の約0.2%であった。

衛星画像解析により特定された最後の焼畑から5,8,9,10,11年経過した二次林5ヶ所に半径20mの円形調査区を設置し、毎木調査を行った。この調査結果を、同保全林における天然林31調査区、循環型な焼畑の休閑林5調査区における先行研究のデータと比較した。

3つの森林タイプすべてにおいて竹類が最も優占していた。焼畑後二次林には木本54種と竹類1種が出現した。その内、天然林と焼畑後二次林に共通して出現した樹木は木本31種と竹類1種であり、焼畑後二次林の胸高断面積合計のうち90.9 %を占めていた。また焼畑後二次林では、天然林では非常に少なかったDuabanga grandifoliaの優占が特徴的だったが、チークの消失やBambusa tuldaの出現といった循環型焼畑休閑林にみられる特徴は示さなかった。よって同地域の焼畑後二次林の植生は天然林植生への遷移過程であることが示唆された。


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