| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-011

希少種の保全を目的とした長野県上伊那地方における水田雑草群落と立地環境条件との関係に関する研究

*新谷大貴(信州大院・農),大窪久美子,大石善隆(信州大・農)

近年,水田環境は多様な淡水湿地生物が代替的に生息生育する場として注目されており,これらの保全は生物多様性の維持に貢献するものとして重要視されている(日鷹ほか2006;嶺田2004;鷲谷ほか2006).その中でも現在,多くの水田雑草は絶滅危惧種に指定され(環境省2007),除草剤の散布や過度の施肥による富栄養化,圃場整備や乾田化といった農業の変遷による水田環境の変化により負の影響を受けていることが問題となっており(角野1994;大窪1995;山口1998),これらの種の保全が急務である.生物多様性保全の観点からは分布情報や立地環境条件との関係性の基礎的データは十分には蓄積されておらず,現在も基本的な課題となっている.

本研究では比較的良好な水田環境が残存している長野県上伊那地方の6つの水田地域(4市町村,標高約700~1050m)において,水田雑草の群落構造や分布,およびこれらと立地環境条件との関係について解明し,希少種の保全策を検討することを目的とした.

調査プロットは各地域にて3~10筆の水田を選抜し,各筆4.0m×0.5mの方形区を4プロット設置した(計172プロット).群落調査は本田内の水田雑草群落を把握するため,2010年8月~9月と9月~10月の2季において各々プロット内に出現した植物種名と被度,群度(Braun-Blanquet 1964) ,草高を測定した.また環境条件を把握するため,各プロットにおいて日照条件・畦畔の構造・土水路との位置関係・非灌漑期における湛水条件の把握,土壌pHの測定,各水田において管理者の聞き取り調査を行った.その結果,希少種としてはイトトリゲモやシャジクモ類が出現した.

発表では,希少種を含む水田雑草群落の特性や立地環境条件との関係について考察する予定である.


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