| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-018

ブナ(Fagus crenata)葉緑体ハプロタイプの近畿地方における分布分析-混在地域を中心に-

*十塚正治(尼崎小田高校), 高橋誠(森林総研), 笠原恵(兵教大生物)

クレードⅠⅡⅢと大別された(Fujii 他.2002)タイプは近畿地方中北部のあいだにⅠとⅡの境があり、タイプB・C・D・Fの接触地域である。兵庫県内は全域が調べられた(Takano他.2007 Nature and Human Activities 12)が京都府はあまり調査されていない。そこで未調査域の京都府を中心に調べて近畿地方のタイプ分布の混在地域を明らかにした。

実験方法はtrnKの一部とtrnL-trnFのシーケンスによりB・C・D・E・Fのタイプを決定した。trnKはcRプライマー(ccccacactctaacggagaa)、trnL-Fはcプライマーでシーケンスした。

結果は京都府の高竜寺岳[C15・D2]、丹後半島[B6]、大江山[B3]、君尾山[B3]、頭巾山[B20]、芦生[B27・D2]、品谷山[B12・D3]、峰床山[F7・B2]、他県の扇山[C3]、妙見山[B3]、六甲山[B16・D2]、三峰山[F1]、大台ヶ原山[F1]、護摩壇山[F1]、城ヶ森[F1]となった。大台(F)、鈴鹿(F)、扇山(C)、氷ノ山(B、C)、六甲山(B、D)などは先行研究で調査済みなので未調査域の京都府を中心に15集団計130個体について調べた。その結果、近畿地方はタイプが混在しFの北限が比良・峰床山、Bの南限が六甲山、Dの西限は高竜寺岳、Cは円山川を東に超えて高竜寺岳が東限であることが分かった。芦生以外、頭巾山などは残存ブナ林の全域を調べた結果なのでDタイプはレフュージアの時点でタイプが混ざっていることが示唆された。他の地域ではタイプが違うものが混ざっていると境目がはっきりしているのに対し、この地域では境目がはっきりせず、他に類を見ない興味深い結果となった。

また比較のためにイヌブナもシーケンスして新しいタイプも見つかった。AB607033~AB607035


日本生態学会