| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-024

東南アジア沿岸域に生育する海草リュウキュウアマモの集団遺伝構造

*松木悠, 中島祐一, 練春蘭(東大ア生セ), Miguel Fortes (University of the Philippines), Wilfredo Uy (Mindanao States University), 仲岡雅裕(北大フィールド科学センター), 灘岡和夫(東工大院情報理工)

リュウキュウスガモThalassia hemprichiiは、西太平洋からインド洋にかけての熱帯・温帯の沿岸域に広く生育する海草である。本種は地下茎を伸長させ広範囲に及ぶパッチを形成し、多くの海草藻場で優占種となり、沿岸生態系における一次生産や物質循環などに重要な役割を果たしている。しかし本種が広く生育する東南アジア地域は、人為的影響による環境悪化が懸念されており、沿岸生態系の維持・保全のための適切な対策を講じるためには海草集団の遺伝構造を把握することが不可欠である。

本研究では、リュウキュウスガモの集団遺伝構造を明らかにするため、琉球列島7地点、フィリピン5地点、中国1地点からサンプルを採集し、マイクロサテライトマーカー12遺伝子座を用いて集団遺伝解析を行った。

各集団のヘテロ接合度の期待値は0.12から0.41、遺伝子座あたりの平均対立遺伝子数は2.0から4.8であった。また、固有の対立遺伝子を保有する集団も見られた。クローン多様性 (Clonal richness)は、琉球列島、フィリピン、中国で大きく異なっており、フィリピンの集団で多様性が高く、本種の分布域北限に近い琉球列島の集団で低い傾向にあった。ペアワイズFSTで評価した集団間の遺伝的分化は比較的大きく、各集団が遺伝的に分化していることが示唆された。各集団間で遺伝的多様性や組成に違いがあったことは、生息環境や環境に応じて有性繁殖とクローン繁殖の割合が異なることを示唆しているものと考えられる。


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