| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-039

大山ブナ老齢林におけるブナ当年生実生の生残パターン

*有馬千弘・永松 大(鳥取大・地域)・稲永路子・戸丸信弘(名大院・生命農)・鳥丸猛(弘前大・農生)・西村尚之(群馬大・社会情報)

西日本有数の大規模なブナ林が広がる鳥取県・伯耆大山南東部の標高およそ1100m,傾斜15°の斜面に設置された4haのブナ林動態試験地では,台風により2003-2006年の間に多くのギャップが形成された。2009年はギャップ形成後初めてのブナ豊作年となり,2010年,多くのブナ実生が芽生えることが期待された。そこで本研究は,本試験地において当年性実生のデモグラフィを追跡し,林冠の撹乱,林床のチシマザサとの関係について考察することを目的とした。調査は4ha中央部の40×30m区間でおこなった。調査範囲内には尾根,谷と平坦地が含まれ,ササの密度が異なるなど多様な環境がそろっている。ブナ実生が発芽する5月から落葉・降雪する11月までの半年間,調査範囲内に芽生えた全ブナ実生を個体識別し,生残を追跡するとともに各実生の分布位置,環境条件を記録した。

調査期間内に発芽したブナ実生は合計227本であった。発芽はほとんどが5月前半であったが,多くが動物による損傷で死亡し,5月末まで生存していたのは約1/4ほどであった。6月下旬には8本にまで減少したが,その後11月までほとんどが生き残った。11月まで生き残った実生の空間分布位置はランダムであった。現在までの解析では,実生の生存について,全天写真から推測した林床の光環境とは無関係であったが,成熟土壌でササが少ない部分に多い傾向があった。今後より詳しい解析をおこない,ブナ当年生実生の生残に関する,確率論的な影響とニッチ分化による影響の寄与について報告する予定である。


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