| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-054

ミドリハコベの胎座2型性による種子生産への影響

*黒川佑(東北大・理),酒井聡樹(東北大・院・生命)

胎座とは、子房内での胚珠のつき方のことである。胎座には多様な種類が存在する。その中でも中軸胎座と独立中央胎座は、花粉管が伸びてくる方向において対比的な存在である。つまり、花粉管が伸びてくる方向が、独立中央胎座では基部側からであるのに対し、中軸胎座では花柱側からである。一方、雌親からの資源はどちらも基部側から供給される。この二つの胎座の適応的意義はどのようなものだろうか?

独立中央胎座では、早くに花粉を受精した胚珠がより多くの資源を吸収するので、基部側の種子の方が大きくなりうる。このため、種子重にばらつきが生じやすいかもしれない。このことは、雌親にとってはデメリットのように思われる。しかし、もし花粉管伸長が速い花粉が遺伝的に優れた花粉ならば、優れた花粉で受精した胚珠により多くの栄養を与えることができ、個体の適応度が高くなるかもしれない。一方、中軸胎座では、受精の順番と資源供給勾配が逆向きになるので、基部側と末端側で種子重に差がでにくく、雌親は均一な種子を作ることができると予想された。

そこで独立中央胎座と中軸胎座という個体内二型性をもつミドリハコベを用いて、各胎座内の位置ごとに胚珠数・受精率・種子重を調べ比較した。

その結果、胚珠数に差はなく、受精率は独立中央胎座の方が有意に高かった。また、中軸胎座では、末端側の胚珠の方が基部側の胚珠に比べて受精率が高かった。一方、独立中央胎座では、胚珠の位置ごとの受精率に差は見られなかった。さらに中軸胎座でも独立中央胎座でも、末端側と基部側の種子重に有意差は見られなかった。

このことから、資源供給と花粉到達の方向は、種子への資源供給パターンに影響しないと考えられる。しかしながら、子房内で早くに受精した胚珠が資源吸収において有利であるかどうかはさらに検討する必要がある。


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