| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-070

ツリフネソウ

*徳田奈菜子,市野隆雄(信州大・理・生物)

掲載されている演題は誤りで、正式な演題は『ツリフネソウ-キツリフネ間における繁殖を巡る相互干渉 ~受粉から結実まで~』です。

同所的かつ同時期に開花する植物の間には繁殖上の様々な種間相互作用が生じる。中でも近年、繁殖干渉(配偶過程で適応度の低下をもたらす相互作用)が注目されている。繁殖干渉は多数派有利の正の頻度依存的な作用であるため種の入れ替わりを急速に進める原動力となり、生態学的に重要である。しかし野外での繁殖干渉の検証例は少ない。なぜなら、繁殖干渉が生じている2種は理論的に共存できず、自然状態での検証が困難とされてきたからである。そのため野外での繁殖干渉の実態についてはよくわかっていない。そこで本研究ではツリフネソウとキツリフネについて、野外の混生地における繁殖干渉の実態を明らかにするため人工授粉実験と野外調査を行い、以下の結果を得た。

1)調査地である長野県安曇野市ではツリフネソウとキツリフネの分布及び開花期間が重複しており、トラマルハナバチによる種間送粉がみられた。

2) 人工授粉実験より、受粉花粉に異種花粉が10%でも混入すると、同種花粉のみの場合に比べ結果率が大幅に低下した。

3) 人工授粉実験より、同種花粉との受粉順序に関わらず、異種花粉の受粉により結果率が低下した。

4)異種と2m以上離れた単独生育地の個体に比べ、異種と2m以内に混生する混生生育地の個体では結果・結実率が有意に低かった。

以上より、ツリフネソウとキツリフネが隣接して生育する場合に繁殖干渉が生じていた。一方、これらの2種が2m以上離れて生育する場合には繁殖干渉はほとんど生じていなかった。混生地とみられる生育地においても、2種のハビタット選好性の微妙な違いや、送粉者の性質から繁殖干渉による形質置換および競争排除が防がれていることが示唆された。


日本生態学会